「毒親」デトックス――『あなたを苦しめる母から自由になる本』
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悩んでいるのが、文字のサイズ。
これだと小さい気がするし
これだと大きくないか?
この中間が欲しい……
今回は長くなるので小さめの方で書きました。
さて、小説じゃない本が続きますが、お付き合いください。
最近広まってきた「毒親」という言葉。掘り下げたいテーマです。
こちらも過去記事の加筆修正版です。
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サブタイトルに「母から離れ、自分らしい結婚を手に入れるレッスン」とあるように、
恋愛・結婚に悩む女性向けに書かれています。
とはいえ、男性が読んでも得るものはあると思う。男性にとっては父親がネックになるのだろうか?
この本に惹かれたのは、私自身、母に対して心に引っかかるものがあったから。
未だに理解し合えているとは思えないし、この先もきっとそうなんだろうとも思う。
内容は、恋愛や結婚について相談に来た女性たちの事例とともに、
その悩みが母親との歪んだ関係性によってもたらされたものであると紐解いていきます。
全体を通して感じたのは、子にとって親とは絶対的な存在であるということ。
特に家庭という構成要素においては、母親は絶大な存在感を持っていること。
これをしっかりと理解して親になる人ってどれくらいいるのだろう。
頭で理解しても、不健全な関係になってしまう親子がどれだけいるだろう。
自分と親だけでなく、もし自分が子供を産んだら、というところまで考えざるを得ない。
母親との関係について、事例と全く同じ、というわけではありませんが、これだ、と思うこともいくつかありました。
例えば、母に認めてもらえない、という感覚。
私は小・中学校と成績は上位だったのですが(通信簿ほぼ5みたいな)、
「よく頑張ったね」「よくできたね」などの言葉をかけてもらったことは一度もありませんでした。
ちなみに父の反応も同様、というか父が通信簿見てる記憶がない。子育てというか子どもに関心がないとしか思えない。
あとは服の好み。
お小遣いが高校までなかったせいで(それも部活の交通費等に消える)、母が買ってくる服しか着られませんでした。貧乏だったしね。
ねだっても買ってもらえないことは小さい頃に理解していたので(ランドセルを買ってもらえなかったことで学んだ)、そういうものなのだと思うようにしていました。
ようやく好きな服を買った時、嬉しさと同時に、不安がありました。
母親からきっと文句を言われる、と。そして予想は的中。
思春期って、いちばんおしゃれとか気になるころなのにね。母の好みを押し付けられただけだったなぁ。
ついでに言うと、世間の(?)父親によくある、娘を買い物に連れていくとか服買ってあげるとかいうことも皆無だった。
この本は母親にスポットを当てているのですが、父親の影響や父親との関係性については触れていません。
この点も掘り下げてみたかったのに……そこについては別著があるのかも知れませんが。
この本で印象的だったのは「毒親」とか「負の遺産を認識する」などと
相談者たちの悩みの根源に親の存在があることを断言しているところです。
いくら毒親といえど、親のことを嫌いだと思っても、そう思うことに対する罪悪感がどこかにあるものです。
それでも、相談者がつらいと思うことを尊重し、その理由を明確にする。
厳しいようではあるけれど、なんだかほっとしたような気持ちになる。
こういう話って、簡単にひとにできる類のものではないしね。
一見辛辣に思えた、ある相談者に対する著者の言葉。
相談者は、母親に認められたい一心で、母親の価値観で生きてきた女性です。
「あなたははりぼて人生を歩んできました。それは母親の代理人生と呼べるものです。でも、それがあなたの人生だったのですから、そうでなかったらよかったのになどという無駄なことは考えないようにしてください」
(石井希尚『あなたを苦しめる母から自由になる本』2015年9月)
相当きついと思います。自分のこれまでの人生がはりぼてだ、と他人から言われるのですから。
でも注目したいのが「それがあなたの人生だった」と、過去形で言っていること。
これは著者が言うように、過去を受け入れる、事実という情報として認識することなのだと思います。
そして、過去の奴隷にならないと決意すること。そのためのステップなのだと思います。
以前何かで、上手くいかないことは全部親のせいにしてしまえ、といったような文面を読んだことがあります。
あいまいな記憶ですが、趣旨の根本にはこの本で言う「毒親」に近い解釈なのだと思います。
しかし、この本は決して親をけなすような言葉はありません。事実を淡々と述べるだけです。
その点、読んでいて心持ちがよかったです。
過去のこと、これからのこと、思い巡らせるきっかけになりましたが、最も心に残った著者の言葉を。
過去が悪かったら、これからも悪いなどと決めつける必要はありません。
(中略)
たしかに、あなたは選べなかった環境によって作られた人です。
でも、あなたはそんな自分を変えられるのです!
(引用は上に同じ)
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成績を認められない、母の買ってきた服しか着られないなど、私も経験してきました。
母を許すと言うと傲慢ですが、「母も1人の人間だ。完璧でなく、欠点を持ったただの人間なのだ」と思えたのは30代後半になってからのことです。
母が亡くなる前にそれに気づけたことが、私には幸いなことでした。
この本を読んで、母親との関係に悩んでいる多くの人たちが、呪縛から解き放たれればいいな、と思います。